美容師が知っておくべき本当のパーマ理論

地方都市では美容室のことを昔は「パーマ屋さん」と呼んでました。筆者は昭和56年から岡山で美容師をしてましたが、その頃は来店するお客さんのほとんどがパーマをかけてましたね〜。

※今では考えられないですが平成初期ぐらいまではパーマ比率40%以上が普通と言われていました。これは子供さんも入れて全ての来店客の4割以上がパーマをかけてたということです。

美容師のためのパーマ理論

従来のパーマってどういうもの?

パーマ理論とは?

髪の毛をロッドに巻いた状態で、シスチン(S-S)結合を1剤の還元剤で切断し2剤の酸化剤で再結合して形状を変えること。

これが美容学校で習った基本中の基本であり、パーマの工程としては・・・

  1. 髪の毛をロッドに巻く(その時に1剤を塗布する場合もあり)
  2. パーマ1剤(還元剤)をつけてS-S結合を切る
  3. 中間水洗して還元剤を流す、もしくは酸リンスでアルカリ中和。
  4. パーマ2剤(酸化剤)をつけてS-S結合を再結合
  5. ロッドアウトしてプレーンリンス

あと薬剤についても、還元剤なんて現在メインはチオとシス・シスアミ程度だし、酸化剤なんてブロムとオキシしかないしね。

これだけ聞けば実にシンプルでわかりやすいんだけど、、、

昭和の時代からいろんなメーカーさんが自社製品の宣伝でいろんな事をいうので、美容師さんは騙されてたり洗脳されてたりするケースが多いです。

パーマ理論って難しいの?

パーマの薬剤反応式って知ってますか?

還元剤 ↓

RSH ⇄ RS + H

還元反応 ↓

KSSK + RSH ⇄ KSSR + KSH  (1)

KSSR + RSH ⇄ RSSR + KSH  (2)

酸化反応 ↓

2KSH + O → KSSK + H2O

筆者は2012年ぐらいから、パーマの理美容師さん向きの講習会や美容専門誌の特集記事でよくこのパーマの化学反応式の説明をしていましたが…

美容専門誌マルセルでのパーマ特集

ほとんどの理美容師さんは化学式アレルギーをお持ちのようで(笑)よほどのヲタク気質の方以外はほぼ理解不能だったと思います。

筆者のようにパーマ技術工程の研究開発をしたりパーマの薬剤を研究したりする人間ならこれらの基礎反応式の理解は必須ですが…
現場でお客さんにパーマをかける美容師さん達なら、こんな難しい化学反応なんて理解しなくても、何個かのポイントをしっかりと押さえれば、パーマで失敗しにくくなったり、よりパーマのクオリティーが上がると思うので今回はそんなお話をしていきましょう。

パーマの薬剤反応は髪が濡れてる時だけ

一般的なコールドパーマの場合は工程中は髪はずっと濡れてる筈なのであまり関係なく、これはパーマでもデジタルパーマやエアウェーブや縮毛矯正の薬剤反応で重要な話として登場してくる基礎知識として知っておくべきものですが…

パーマの薬剤が反応するのは、髪の毛がウェット状態の時だけです。

※今回は普通のコールドパーマでお話を進めますので、デジタルパーマやエアウェーブのお話はまた別の記事解説します

ちなみに、よく皆さんがアルカリ性とか弱酸性とかいうpH(ピーエイチ)っていうのは「水素イオン濃度」っていって溶液中にどのくらい水素イオンが含まれてるのかって事なので…

アルカリ性や酸性というのも髪が濡れてる時だけのお話ですからね。

1剤を中間水洗しても還元剤は流れ落ちません!

従来のパーマ工程では、1剤の還元剤が髪のS-S結合を切断し、中間水洗して還元剤をお湯で流して落としてから還元をストップさせて2剤で酸化してS-S再結合させるという理論でした。

平成20年ごろに流行った「クリープパーマ」実はこれを美容師さんたちに広めたのは筆者と言われてますが…

猿でも解る! クリープパーマ

クリープパーマは1剤後にしっかりと中間水洗し 還元剤を流し落としてから スチーマーやホットタオルで加温して、従来では不可能だった大きめでプリンとしたしっかりカールがかかるというもので、中間水洗して還元剤を流しているのでダメージも少ないと言われていて人気が出たパーマ技法です。

当時筆者は美容専門誌の出演のため月の半分近くは東京にいて、いろんな取材や撮影をしていて、日本を代表する毛髪研究の第一人者の新井幸三先生に毛髪やパーマの理論を教えて頂いていたんですが…

毛髪研究

この新井先生とパーマ理論のお話をしてて、2014年の秋にクリープパーマ理論は間違いだったと気づきました(汗)

クリープパーマ理論は間違いでした!

なぜ 今までのクリープパーマ理論は間違いなのか?

パーマ理論で今までみんなが信じていた「中間水洗」の常識が覆させられました

中間水洗しても還元剤はそう簡単には流れません!

通常の還元剤なら24時間ほど水に浸していてやっと流れでるレベルだそうです…
2014年以降、これによってパーマ理論は大きく変わってしまうのです。

2剤前にアシッド処理は絶対にしてはいけない!

通常パーマの1剤はアルカリ性なので、2剤の前にクエン酸水などのアシッド剤でアルカリ中和させたほうがダメージが少ないと考えられていました。
サロンによっては、2剤前にアシッド処理をする場合は中間水洗の必要もないという所もあったぐらいです。

昭和時代のコールドパーマ

これも新井先生と一緒にパーマの研究中に発見したのですが…
パーマ2剤の前に酸リンス剤・アシッド剤・バッファ剤など酸性の処理剤を使用すると、1剤で切られたシスチンがイオン化、2剤でのシスチンの再結合がとてもされにくくなります。

間違いだらけの 2液前の酸リンス

パーマの中間での 酸リンスが間違いの元・・・

あと従来のアシッド剤ではアルカリ中和は不可能なことも実験検証してわかりました。

ヘアカラーやパーマ剤のアルカリ除去とは?

パーマがダレたり、持ちが悪くなったり、ヘアダメージが増えたりしますので…

パーマの2剤前にアシッド処理は行なってはいけません!

ただし、アルカリ性の1剤を使用したらアシッド処理をたほうが良いのは間違いではないので、2剤処理の後には必ず行なったほうがいいです。

処理剤なんて下水の肥やし!?

パーマではヘアダメージを軽減するために、1剤と2剤だけでなく前処理剤・中間処理剤・後処理剤など沢山の種類の処理剤をつける美容師さんも多いです。

◎ワインディング前後や1剤塗布前にケラチンやコラーゲン・シルクなど各種PPT類や髪の栄養成分と呼ばれてるモノを塗布する前処理剤

◎テストカールOK後、2剤前に塗布するアシッド剤・保湿剤や補修成分などをつける中間処理剤

◎2剤後に髪の補強やツヤサラでダメージを感じさせないようにつけるカチオン系ポリマーやシリコンなどの表面コート剤などの後処理剤


良かれと思って使用してた処理剤のほとんどが つけても意味がない(下水の肥やし)か 逆に悪い効果しかありません!

※一部の残留物質の中和、除去剤等は使い方を間違えなければした方がいいです。

昭和のコールドパーマ

パーマでの処理剤というのは???

前処理ケラチンやPPTなど髪の類似成分や栄養成分などを入れてダメージを減らすというけど、そんな成分を入れても同化も結合も出来ないで一時的に入っているだけでダメージ修復効果はない。
パーマ1剤の還元前にこういう成分が浸透していると、還元反応の妨害になってしまう のでその分強い還元剤が必要になり逆にダメージを増やしてしまう可能性もある。
中間処理前章で説明したように、ここでアシッド剤や酸リンス等でアルカリ中和をしてしまうとイオン化出来ないので2剤の反応が悪くS-Sの再結合が出来にくくなってしまう。
他の成分でもこのタイミングだとS-S結合は切れてる時なので、髪の中にいろんな成分が入ってしまうと 2剤でのS-S再結合の妨害をしてしまう。
後処理アシッド剤やカタラーゼ等の残留物質の中和・除去剤は使うべきだけど、ダメージを感じさせないようにするトリートメント的な処理剤の場合は、内部補強する成分は前処理と同じで効果がないだけだが、注意したいのは感触向上成分の表面コート剤!?強い皮膜でコーティングするとパーマ剤のアルカリなどの残留物質が閉じ込められ長く残留して余計に髪を傷めてしまいます。

髪に良かれと思って使用していた各種処理剤が実はこのようにパーマの薬剤反応の妨害をしたり、強い表面皮膜で悪い薬品を髪に残留させてヘアダメージさせてたりしたんですね。

パーマでは必要のない処理剤は使用しないほうが絶対にいいです!

ダメージレスのパーマなんてありません!

ノンアルカリ弱酸性パーマ、スピエラ・GMT、化粧品登録の薬剤、髪質改善などなど… 髪を傷めない!?と宣伝されてるパーマは沢山あります。

でも… 髪の毛のケラチン同士の結合を強烈な薬品で切断し、3割以上は再結合が出来ず切れっぱなしで放置するパーマなので

髪を全く傷めない(ダメージレス)なんて絶対にあり得ません!

クリープパーマ

このように

◎パーマ薬剤の反応は髪が濡れてる時だけ

◎中間水洗しても1剤の還元剤は流れない

◎2剤の前にアシッド処理をしてはいけない

◎パーマの前・中間・後処理剤は使わない

◎ダメージレスなパーマなどありません

これらのポイントを理解してパーマ技術をもう一度見直してみてください。きっとパーマのクオリティーが上がるハズです。