「ヘアカラーやパーマ、縮毛矯正の後はアルカリ除去・アルカリ中和が大切!」美容室やヘアケアの記事で一度は目にしたことがあると思います。
しかし、市販のクエン酸リンスや、「ヘマチン配合のアルカリ除去トリートメント」を施術後に使って、本当にアルカリが中和できているのでしょうか?
結論から言えば、一般的なクエン酸やリンゴ酸の酸リンス、そしてヘマチンでは、カラーやパーマの強烈なアルカリを中和することなど絶対に不可能です。
今回は、ケミカル理論に基づき、なぜアルカリが必要で、なぜ残留すると深刻なヘアダメージを引き起こすのか、そして本当に必要なアルカリ中和・除去の真実を解説します。
なぜカラーやパーマに強いアルカリが必要なのか?
よく「キューティクルを開いて薬剤を浸透させるため」と説明されますが、それは副次的な現象に過ぎません。アルカリを使う真の目的は、化学反応そのものを成立させるためです。
- ヘアカラー(白髪染め・おしゃれ染め)
2剤である過酸化水素は、酸性の状態では安定して反応しません。アルカリ剤によってpHを引き上げることで初めて過酸化水素が活性化し、フリーラジカルを放出してメラニン色素を分解・脱色(リフト)し、酸化染料同士を結合・発色させます。 - パーマ・縮毛矯正
チオグリコール酸(pKa 約10.4)やシステアミン(pKa 約8.3)などの還元剤は、分子内のチオール基が電離してチオラートアニオンになって初めて髪のシスチン結合を切断できます。酸性〜中性ではほとんど電離しないため、薬剤のpHをアルカリ域に持ち上げて解離度を高め、有効な還元力を引き出すために強いアルカリが必要不可欠なのです。
薬剤を効かせるためにアルカリは必須ですが、反応が終わった後の髪にアルカリが残れば、今度は髪のケラチンタンパク質を徐々に溶かし、致命的なダメージの原因となります。
「pH」と「アルカリ度」の違いが分かれば嘘が見抜ける
多くの人が、そしてプロの美容師ですら陥る最大の勘違いが「pH(ピーエッチ)」と「アルカリ度」の混同です。
- pH:その瞬間の「酸性・アルカリ性の度合い(水素イオン濃度)」を表す数値。
- アルカリ度:その溶液を中性(pH7)に戻すために必要な酸の量(酸の分子の数)。
たとえば、固形石鹸水も、サロンの縮毛矯正1剤も、同じ「pH9.5」前後になることがあります。
しかし、石鹸水はアルカリ度が低いため、お湯(pH7程度)ですすぐだけで中性に近づき、通常のリンスで簡単に弱酸性に戻ります。
一方、縮毛矯正剤やカラー剤はアルカリ度が非常に高く作られています(アルカリ度6〜7mlなど)。これは大量の酸を投入しなければ中性に戻らないことを意味します。
このアルカリ度の高さを理解していなければ、正しいアルカリ中和は語れません。
クエン酸・リンゴ酸・ヘマチンでアルカリ中和ができない理由
① ヘマチンによるアルカリ中和は「絶対に不可能」
ネット広告や製品説明で「ヘマチン配合で残留アルカリを除去!」と謳われることがありますが、化学的に見れば完全に誤りです。
- ヘマチンは有機酸(酸性物質)ではない
アルカリを中和するには、水酸化物イオンを打ち消す「水素イオン」の絶対量が必要です。ヘマチンは有機酸ではなく、pHを動かす緩衝作用(バッファー能)を持ち合わせていません。 - 物理的なモル数が全く足りない
トリートメントや処理剤に配合されるヘマチンは、せいぜい1%未満の微量です。カラー剤や縮毛矯正剤の強烈なアルカリ度に対抗できるだけの酸の分子など、物理的に存在していません。 - ※ヘマチンが持つ「過酸化水素の分解作用」や「架橋効果」と、アルカリ中和を混同したメーカーの誇大広告です。
② クエン酸やリンゴ酸では酸度が足りない
薬局のクエン酸を水に溶かしたり、一般的な酸リンス(バッファー剤)を塗布しても中和はできません。
- pHは下がっても「酸度」が足りない
薄いクエン酸水はpH2〜3前後の強酸性を示しますが、「酸度(アルカリを中和しきる酸の絶対量)」が極めて低いため、カラー剤の高いアルカリ度を前にすると一瞬で中和力を失います。 - 急激な「過収斂(過度の引き締め)」の危険性
pH2などの強酸性を髪につけると、キューティクルが急激に収縮(収斂)して髪がガチガチ・ギシギシに硬化します。その結果、表面だけが閉じて内部にアルカリ成分を閉じ込めてしまうという本末転倒な事態を引き起こします。
本当のアルカリ中和・アルカリ除去とは?
アルカリによる髪の傷みを食い止めるには、以下の2つの絶対条件が必要です。
条件1:収斂させない弱酸性(pH5前後)で「高い酸度」を持つアシッド剤
髪をギシギシに引き締めないpH5前後の弱酸性を維持しながら、高濃度のアルカリ度をしっかりと打ち消せるだけの「高い酸度(水素イオンの総量)」を備えた専用のアシッド処理剤(プロ用の『DO-S ACID』や、ホームケア用の『DO-S アルカリオフ』など)でなければ、髪を傷めずに内部までアルカリを中和することはできません。
条件2:「中和」と「除去」を混同せず、しっかり洗えるシャンプーを使う
- アルカリ中和:アルカリ性に傾いた毛髪環境を酸度のあるアシッド剤で弱酸性に引き戻すこと。
- アルカリ除去:中和反応によって遊離したアルカリ残留物を、シャンプーで洗い流して髪の外へ排出すること。
酸性トリートメントをつけただけではアルカリは「毛髪外へ除去」されていません。
さらに、マイルドすぎるアミノ酸系シャンプーや、シリコン・ポリマーで髪を覆う「皮膜トリートメント」を施術直後に使うと、表面に分厚いコーティングを作ってしまい、内部の残留物質が外へ抜け出せなくなります。
アルカリ中和の検証実験
アルカリ度の高いカラーやパーマ剤でのアルカリ残留は、酸度の弱いクエン酸のアシッド剤や魔法のお水ではアルカリ中和は不可能!? ではこれの簡単な検証を見てみましょう。
まずはアルカリ性のパーマ1剤を水で1.5倍に薄めたものを用意しました。
↓

元々はpH9.2のパーマ液を水で1.5倍に薄めると、pHは約9程度になりました。
そして一般的によく使用されてるクエン酸のアシッド剤を作ります。
↓

なんとpH1.8の強い酸性になりました!
この強酸性のアシッド剤を最初に作ったパーマ剤に1:1で混ぜます
↓

最初は酸性になりますが、少し時間経過すると pH8.63のアルカリ性になりました。
多くの理美容師さんはこのクエン酸ベースのアシッド剤を使用していますが・・・
クエン酸のアシッド剤ではアルカリ中和は不可能です!
ちなみに同じ条件下の実験検証結果だと・・・
アルカリ除去だけでなく過酸化水素や毛染めのカブれの原因であるジアミンまで除去できて髪質改善まで出来る!と宣伝されてる高機能還元水(ヤクジョスイ)なら
↓

酸度のないお水系ではアルカリ度の高いパーマやヘアカラー剤のアルカリ中和は全く不可能ですよね。
筆者の開発した理美容室専用のpH5程度でとても酸度の高いの『DO-Sアシッド』なら
↓

特殊な弱酸性のpHのアシッド剤で酸度が強いため弱酸性まで戻せました。
同じく筆者の開発した一般用の『DO-Sアルカリオフ』なら
↓

プロの美容師専用のDO-Sアシッドほどではありませんが、それなりにアルカリ中和は出来そうですね。
アルカリ度の高い薬剤を中和するには酸度の高い薬剤を使用しなければいけません。
アルカリ中和、除去に関するよくある質問(FAQ)
Q. ヘアカラーのアルカリを除去するにはどうしたらいいですか?
A. 「弱酸性で酸度が高いアシッド剤で中和」し、そのうえで「残留物質をしっかり洗い落とせるシャンプーで除去」する2段階の工程が必要です。
多くの人が「中和」と「除去」を混同していますが、まったくの別物です。
- 中和:アルカリ性に傾いた髪を、酸の力で本来の弱酸性(pH4.5~5.5)へ引き戻すこと。
- 除去:中和によって遊離したアルカリ成分を、シャンプーの界面活性剤で髪の外へ洗い流すこと。
強い酸リンスやトリートメントをつけただけでは、アルカリ成分は毛髪内に留まったままで「除去」は完了していません。必ず適切なシャンプーで洗い流す必要があります。
Q. 自宅でできる髪のアルカリ除去方法は?
A. 自宅用の中和剤(DO-S アルカリオフなど)を塗布してアルカリを中和し、皮膜成分の入っていないシャンプーでしっかり洗い流すケアを施術後1週間ほど続けてください。
- お風呂で髪をよく濡らした後、高酸度のホームケア用アシッド剤(アルカリオフ等)を髪全体にしっかり塗布し、内部まで浸透させてアルカリ度を中和します。
- 軽くすすいだ後、コーティング剤(シリコンやポリマー)に頼らない、きちんと洗えるシャンプーで泡立てて残留物を洗い流します。
- カラーやパーマの薬剤は1回洗っただけでは完全には抜けないため、施術後5日〜1週間ほどこの手順を継続するのが理想です。
Q. 残留アルカリを除去するシャンプーはありますか?
A. シャンプーそのものにアルカリを中和・除去する特殊な魔法の力はありません。「皮膜で毛髪を塞がず、汚れや薬剤残留物をしっかり落とせる洗浄力を持ったシャンプー」を選ぶことが正解です。
世間には「アルカリ除去シャンプー」と銘打った製品もありますが、シャンプー液自体は基本的に中性〜弱酸性の界面活性剤です。 重要なのは、シャンプーがアルカリを消し去るのではなく、アシッド剤で中和されたアルカリ成分を邪魔(皮膜)なく洗い流せるかどうかです。
- NGな例:オーガニック系やマイルドすぎるアミノ酸系シャンプー、シリコンやカチオン界面活性剤などの皮膜成分がたっぷり入ったシャンプー。これらは洗浄力が弱すぎてアルカリを落とせないばかりか、強力な油膜で髪を包み込み、内部のアルカリ残留物を閉じ込めてしまいます。
- OKな例:余計な皮膜剤が入っておらず、汚れや薬剤を素直に洗い流せる「すっぴん髪」になれるシャンプー(DO-Sシャンプーなど)。
Q. ヘアカラー後に薬局で売っているクエン酸を使うとアルカリ除去できますか?
A. 除去も中和もできません。むしろ髪を激しく傷める危険があるため絶対におすすめしません。
理由は2つあります。
- 「酸度」が圧倒的に足りない:水に溶かしたクエン酸は、pHこそ2〜3前後の強酸性を示しますが、カラー剤や縮毛矯正剤の強烈なアルカリ度を打ち消すための「酸の絶対量(酸度)」が物理的に全く足りていません。
- 過収斂(かしゅうれん)による閉じ込め:pH2などの強酸性を髪につけると、キューティクルが急激に収縮してガチガチ・ギシギシに硬化します。表面が無理やり引き締まることで、内部に残ったアルカリ成分や過酸化水素を髪の中に閉じ込めてしまい、内部崩壊を悪化させる原因になります。
アルカリを安全に中和するには、髪を硬化させない「pH5前後の弱酸性」でありながら、アルカリ度を帳消しにできる「高い酸度」を備えた専用の処理剤でなければ効果はありません。
Q. アルカリ除去をしないと髪はどうなりますか?
A. 日が経つにつれてケラチンタンパク質が破壊され、深刻なバサつき、枝毛・切れ毛、急激な色落ち(褪色)が止まらなくなります。
頭皮や肌は自身の皮脂や汗によって自力で弱酸性に戻る力を持っていますが、死滅細胞である髪の毛には自己修復力がありません。アルカリ除去を怠ると、以下のようなダメージが進行します。
- タンパク質の流出・ダメージホールの拡大:アルカリによってキューティクルが剥がれやすい状態が続き、髪の芯であるケラチンが日々のシャンプーや摩擦で流出していきます。
- 過酸化水素による内部酸化:カラー剤に含まれるオキシ(過酸化水素)がアルカリとともに残留し、髪の中で脱色・破壊反応をいつまでも続け、染めた色がすぐに明るく抜けてしまいます。
- 髪の命である「結合水」の減少:髪の内部構造が壊れることで、髪本来の潤いを保つ「結合水」が失われ、どれだけトリートメントをつけても乾くと毛先がチリチリ・ゴワゴワに広がる髪になってしまいます。
まとめ:正しい後処理が未来の髪を守る
- カラーやパーマのアルカリは、過酸化水素の活性化や還元剤のpKa(チオラート解離)のために不可欠。
- しかし施術後は「アルカリ度」が高いため、自然には弱酸性に戻らない。
- ヘマチンにアルカリ中和能力は皆無であり、薄いクエン酸やリンゴ酸では酸度が足りず過収斂を起こすだけ。
- 「弱酸性かつ高酸度のアシッド剤で中和」し、皮膜を貼らずに「ちゃんと落とせるシャンプーで除去」することが、唯一正しいヘアケアの真実です。
見せかけのツヤや手触りだけのトリートメントに惑わされず、科学的根拠に基づいた本質的なアルカリケアを行いましょう。
アルカリ除去するアシッド剤とシャントリ
理美容室で使用するアルカリ度のつよい薬剤に対応するために高い酸度を持ちながら、しかも収斂させないpH5前後の弱酸性で作られた理想のアシッド剤
↓

DO-S ACID(アシッド)
理美容室のみの取り扱いですので、詳しくはこの記事をお読みください。
↓
DO-Sアシッド〜唯一無二のアルカリ中和剤!?
一般の方はホームケア用にDO-SアシッドをアレンジしたDO-Sアルカリオフ
↓
DO-S アルカリオフ

詳しくはこちらの記事をお読みください
↓
DO-Sアルカリオフの使用方法
DO-Sアシッドやアルカリオフはアルカリを中和するものです。アルカリ除去をするのはシャンプーですので、アルカリ除去が出来るシャンプーを使用しましょう↓
DO-Sシャンプー&トリートメント400mlセット

※DO-SアシッドやDO-Sアルカリオフはアルカリの中和剤です。弊社のDO-Sシャンプー&DO-Sトリートメントを使用することでアルカリ除去効果を発揮するような設計で作られています。
他社のシャンプー・トリートメントを使用した場合、どの程度のアルカリ除去効果があるのかはわかりませんのでご注意ください。
※DO-SアシッドやDO-Sアルカリオフで中和できるのはアルカリです!プール等の塩素を中和することは出来ません。
毛染めやパーマのアルカリ除去!DO-Sアルカリオフの使用方法
髪質改善の嘘?すっぴん髪へ導くDO-Sシャンプー&トリートメント
髪質改善の嘘?すっぴん髪へ導くDO-Sシャンプー&トリートメント
コラム執筆者プロフィール
森下 秀彦(美容師歴約50年・毛髪専門家・DO-S製品研究開発者) 全国の理美容師へパーマ・縮毛矯正の薬剤理論を指導する元美容師。「世の中のヘアダメージで悩む人を救いたい」という想いから、独自のすっぴん髪・素髪理論に基づいたヘアケア情報を発信しています。































