理美容室にはパーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正、ヘアカラーリング、ブリーチ、髪質改善など薬品を使ってカールやウェーブをつけたり、癖毛をストレートにしたり、明るさや色を変えるたり、ダメージ毛をツヤサラの見た目に変える技術があります。
これらの薬品を使って毛髪に変化をもたらすメニューたちでは、いまだに『ダメージレス』『ノンダメージ』だのとパーマや毛染めをしても髪を傷めない!って宣伝してる美容メーカーさんとか美容師さんとかもいますが… 正直嘘ですね(汗)
化学薬品で髪に変化を加えれば、絶対に髪は傷みます!
ってことで、今回はパーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正げメインになりますが、本当のヘアダメージの原因を説明していきたいと思います。
ヘアダメージの原因はアルカリ性だから?
筆者は10年以上前から美容師ブログを毎日書いています。そのブログでも一般の方や理美容師さんから毛髪ダメージや美容技術、使用薬剤、毛髪化学関連の質問を頂いてます。
その中でもみんなが誤解している事が… ヘアカラーリングやパーマ・ストレートパーマ・縮毛矯正や髪質改善などのメニューでの髪の傷みは『薬剤のアルカリ』が原因だと思ってる事です。
諸悪の根源はアルカリ?・・・髪の毛は弱酸性が良い状態でアルカリは悪い状態である。強いアルカリ性の薬品はキューティクルや髪のケラチンタンパク質を溶かしてしまうし、モノエタノールアミンなどのアルカリ成分は髪や頭皮に残留して髪を傷めたり毛根を損傷させ抜け毛や細毛、軟毛の要因にもなります。
アルカリは必要悪な部分もある・・・このように確かにアルカリは髪の毛を損傷させますが… 例えば、ノンアルカリのヘアカラー剤は脱色しないので日本人の黒髪を明るくすることが不可能になったり、パーマならアルカリが弱いとパーマのかかりも非常に弱くなるので健康毛や太い毛、硬い毛、ノンカラー毛の方なんてパーマが掛からなかったり、速攻で取れてしまったりするのです。
そう黒髪を明るく染めるにはアルカリは絶対に必要だし、パーマや縮毛矯正をしっかりかけるにも必要なものなのです。
髪は弱酸性の状態がベストなのは間違いありませんし、アルカリでヘアダメージするのも間違いではありませんが、毛染めやパーマ等でのヘアダメージの主な原因がアルカリだと思い込むのは辞めてください。
ヘアカラー・ブリーチでのダメージの原因は?
ここで説明するヘアカラーは、日本人の黒に近いような暗い髪色を明るくするヘアカラーやブリーチ、あと自然色〜少し明るめに染まる白髪染めなどの1剤と2剤を混ぜて染めるようなカラー剤のお話になります。(ヘアマニキュア、酸性カラー、塩基性・HC、ヘナではありません)
基本、アルカリ性の1剤と過酸化水素水(オキシドール)2剤を混ぜて染めるヘアカラー剤は、1剤のアルカリと2剤のオキシドールの反応で髪のメラニン色素を破壊して暗い髪色を明るく脱色します。ブリーチやライトナーといわれるものはこの脱色のみを行います。
そして白髪染めやオシャレ染めといわれるヘアカラーの場合はこの脱色と同時にヘアカラー剤の色素とオキシドールの反応で色素を発色させて色味をつけています。
- 脱色=1剤のアルカリ+2剤のオキシドール
- 発色=カラー剤の色素+2剤のオキシドール
よく自毛と変わらないような暗めの白髪染めだと脱色をしてないように思ってる方もいますが、このような暗めの白髪染めでも黒髪を脱色して色素を発色させてる場合がほとんどなのです。
ヘアカラーリングは、このような仕組みで行われているのですが…
この時のヘアダメージの大半はアルカリ剤で髪の毛を溶解したり、S-S結合に切断してランチオニンを生成したり、アルカリとオキシの反応でメラニン色素を破壊する『脱色』で起こります。
ヘアカラーダメージの原因の多くは、強いアルカリ剤による溶解、ランチオニン、メラニン色素破壊です。
ヘアカラーでの髪の傷みはなんで起こるの?ヘアダメージを軽減するには?
これらヘアカラーリングでの傷みを軽減する対処法としては、そもそも髪色を明るくする脱色剤入りのカラー剤と使わないとか、出来るだけリタッチ塗布にして同じ部分を何度もブリーチしないようにするとかがあります。
髪質改善トリートメントのヘアダメージは?
未だに髪質改善ヘアエステや酸熱トリートメント等のサロントリートメントでヘアダメージ修復されるように思い込んでる方もいますが… これは大間違いです。
例えば、髪の毛と同じようなケラチンタンパク質などの髪の栄養成分などと言われる成分が髪に入ったとしてもそれらの成分が髪の毛のケラチンと結合も同化もしないので損傷した髪が治ることは不可能です。
しかも、これらの髪質改善系メニューはツヤサラ美髪状態を持続させるために強力な表面コーティング(皮膜、被膜)をします。
この強力な表面コートによって見た目は艶々でダメージ補修が出来たように見えますが、皮膜のせいで髪の水分調整が上手く出来なくなり、『髪の命』と呼ばれる結合水が減少しヘアダメージしてしまいます。
【髪質改善】DO-Sすっぴん髪・素髪ヘアケアでヘアダメージ修復
毛髪の大切な水分とは?結合水・自由水・吸着水とヘアダメージの関係
パーマや縮毛矯正やカラーリングのような激しいヘアダメージではありませんが…
髪質改善系のサロントリートメントは見た目はダメージがよくなったように感じても、それはキューティクルに皮膜を貼ってるだけなので、水分が減少して脆くなり傷んでいってしまいます。
これら髪質改善やサロントリーメントでのヘアダメージを軽減するには、強力な皮膜を貼らないものにするとか、施術後に出来るだけ皮膜成分を早く取るようなシャンプー&トリートメントなどでホームケアを行うとかがあります。
パーマ・縮毛矯正でのヘアダメージとは?
スピエラ酸性パーマはダメージレス!GMT弱酸性縮毛矯正だからノンダメージ?などアルカリを使わなければ傷まないとか、高温のアイロンを使用しないストレートパーマだからダメージしないとか… パーマやストレートパーマや縮毛矯正のヘアダメージにはとても誤解が多いです。
でもね、たかが数ヶ月に1回のパーマ中にアルカリ性になったからとか、縮毛矯正で160℃のストレートアイロンをしたからだけでそんなに激しくヘアダメージなんてしません。
パーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正などでのヘアダメージの原因を知るには、まずはこれらがかかる理論を知らないといけません、これをわかりやすくパーマで説明するとね。
毛髪というのは80〜90%ぐらいがケラチンタンパク質で出来ているんだけど、それらのケラチンタンパク質はシスチン結合(S-S結合、ジスルフィド結合)という側鎖で繋がっています。
そしてパーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正など髪の形状を変えるメニューたちは、まず1剤の還元剤といわれる成分でこのS-S結合を切断します↓
S-S結合を切断したらロッドに巻いて形状を変えます。↓
S-S結合が切れた状態で形状変化するのでシステインの位置がズレます。
そして形状変化した状態で2剤のブロム酸や過酸化水素水という酸化剤でS-S結合を再結合させます。↓
これがパーマの原理ですが、ストレートパーマや縮毛矯正でもまったく同じで癖毛の状態でS-S結合を切り、ストレート形状にしてから再結合させるのです。
このように原理的はとても簡単で、髪のケラチンタンパク質の側鎖を切って、形を変えて、再結合させるだけです!
そして、パーマ・ストレートパーマ・縮毛矯正のヘアダメージの一番の原因は、この反応で出来る 切断されたまま再結合出来ない切れっぱなしのシステイン なのです。
この側鎖が切れっぱなし状態の部分が増えると髪のケラチンタンパク質が流出してしまいダメージホールが出来てしまいドンドン髪は傷んでいってしまいます。
この各種パーマやストレートパーマ、縮毛矯正などのダメージの一番の原因である切れたまんまのシステインには、薬剤反応の仕組み的にどうしても出来てしまう ミックスジスルフィド (混合二流化物・KSSR)というものがあります。
このミックスジスルフィドをパーマ、縮毛矯正の薬剤反応でいうとね…
髪の毛のケラチンタンパク質はシステイン同士が側鎖で繋がれてシスチン結合(S-S結合)してます。
この図の一個のSがシステイン、2つ連結するとシスチンということです。
このシスチン結合を1剤の還元剤で切断します
↓
この図のように還元剤でシスチン結合を切断するとそのシステインには水素(H)がついています。
そしてこの図↑にある酸素(O)ってのが2剤の酸化剤ですね。
この2剤の酸素がシステインの水素2つとが反応して水(H2O)になり水素を取られたシステイン同士が再結合します。
↓
これがパーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正でのシスチン結合の切断と再結合の原理なんですね。
ただし、この反応で1剤でシスチン結合を切断した時に一定数どうしてもできるのがミックスジスルフィドです。
↓
このミックスジスルフィドが出来ると、片方のシステインに水素がつかないので、シスチン再結合が不可能になってしまいます。
しかも…
ミックスジスルフィドは薬剤反応で必ず出来るものなので、防ぐことは不可能です!
このミックスジスルフィドのせいで2〜3割は切れっぱなしのシステインが出来ると言われていますが、これはどうしようもないのです(涙)
だから最新の還元剤だろうが弱酸性だろうがノンアイロンだろうが、原理的に100個の結合を切断して70個ぐらいしか再結合できないので、絶対にヘアダメージは増加していくのです!
このミックスジスルフィド問題がある限り、酸性や弱酸性であろうが特許成分で出来た最新のパーマ剤であろうが、全くヘアダメージしない!ノンダメージ・ダメージレスというのはあり得ない事なのです。
このようにミックスジスルフィドによって出来てしまう【切れっぱなしのシステイン】はパーマやストレートパーマ、縮毛矯正をする限り原理的に出来てしまうのでどうしようもありません。
またこのミックスジスルフィド問題以外にも2剤でのシスチン再結合の邪魔をしてるものもあります。
やりすぎ2剤でヘアダメージするシステイン酸
パーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正の薬剤反応でどうしても出来てしまうミックスジスルフィド!こいつは1剤の還元反応で起こってしまうものなのですが、2剤でも切れっぱなしのシステインを作ってしまうのが『システイン酸』と言われるものです。
システイン酸というのは… 2剤の酸化剤には臭素酸(ブロム酸)や過酸化水素水(オキシドール)たちを使うのですが…
高濃度のものを使ったり、長時間放置しすぎたりして切断されたシステインの水素をとり、酸化物質がくっついたものです↓
このようにシステイン酸になっちゃったシステインは再結合が出来なくなり『切れっぱなしのシステイン』になりドンドンと髪を傷めてしまいます。
システイン酸を防止するには、あまり高濃度の2剤を使用しない、長時間放置しない、過酸化水素水(オキシ)の2剤を使用した場合は、DO-S OX-ZERO(カタラーゼ)等でオキシ除去を行うことが重要になってきます。
※酸性パーマや酸性縮毛矯正の2剤には、高濃度のオキシを使用する事が多いので特に注意が必要です。
強いアルカリ+長時間で起こるランチオニン
これはパーマや縮毛矯正だけでなく、きついアルカリ成分を使うブリーチや毛染めなどでも起こるのですが、『ランチオニン・ランチオニン結合』というものがあります。
ランチオニンというのは… パーマやストレートパーマ、縮毛矯正やブリーチなどでかなり強いアルカリ性の薬剤に長時間さらされると、切断されたシスチン結合の片方のシステインが「デヒドロアラニン中間体」というアミノ酸に変わってしまうのです↓
すると、このデヒドロアラニン中間体とそこらへんにある切れたシステインが反応して↓
2度と切れない永久架橋のランチオン結合になってしまうのです。
ランチオニン結合が増えるとパーマや縮毛矯正がかかりにくくなってきますし、シスチン自体も減少してしまうのでどんどんヘアダメージは増えていってしまいます。
このランチオニンの予防法としては、パーマの場合は出来るだけpHの低い薬剤で応力緩和(プレクリープ技法)などで還元時間の短縮を考えるとか、ストレートパーマや縮毛矯正の場合はDO-S式の低アルカリ高還元剤濃度の1剤を使用するとかがあります。
使用薬剤やアシッド剤にもヘアダメージの原因が…
今まで書いたように、パーマや縮毛矯正のダメージの一番の原因である『切れっぱなしのシステイン』はミックスジスルフィドやシステイン酸、ランチオニン以外にも色々あります。
- パーマ剤や縮毛矯正剤の1剤にいろんな感触向上成分を配合すると、それらの残留成分が切れたシスチンにくっついてしまい再結合の妨害をしてしまう。
- 縮毛矯正などで酸性〜弱酸性の1剤(還元剤)を使うとオキシ2剤の反応が悪くなりS-S再結合が少なくなる。
- 2剤前に酸性のアシッド剤・酸リンス・バッファー剤などをつけてしまうと、切れたシスチンについてる水素がイオン化されなくなりので再結合されにくくなる。
↓
間違いだらけの 2液前の酸リンス - 2剤の前に中間処理剤を使用するとその成分が切れたシステインに吸着し再結合しにくくなる。
パーマやストレートパーマ、縮毛矯正では1剤でシスチン結合を切って、2剤で再結合させるという基本原理があるので、感触向上成分などを配合したパーマ剤は使用しないとか、出来るだけ酸性や弱酸性の1剤は使用しないとか2剤の再結合前にアシッド剤等を使用して酸性にしないや、シスチンの再結合の邪魔をするような処理剤や感触向上剤を使わないなどに注意するのがとても大切なことなのです。
皆さんはアルカリ性の薬品やアイロンやデジパーでの加温などが主原因でヘアダメージしてると思い込んでいますが、本来はこの『切れっぱなしのシスチン』こそがパーマや縮毛矯正でのヘアダメージの一番の原因なのです。