髪質改善メニューや酸熱トリートメント、水素トリートメントなどはグレオキシル酸やレブリン酸が熱による脱水でイミノ結合し脱水縮合?ブリーチ剤に添加するオラブレックスやファイバープレックスなどのプレックス剤はカルボン酸にジカルボン酸(マレイン酸)・トリカルボン酸やジマレイン酸を使って、シスチン残基に架橋だの水素結合だの…
なんちゃら酸だの なんとか結合だの もうややこしすぎて 全然理解出来ません(涙)
な〜んて現役の美容師さん、理容師さんなどにもよく質問や相談を頂きますので、今回はヘアトリートメントの毛髪内部の修復?補強?の仕組みをわかりやすく解説していきたいと思います。
※活性酸素にヒドロキシラジカルだの、海洋深層水に天然ミネラルに電子水だの、よくわからない空想化学はわかりませんので今回は省き、ちゃんとした理論があるものだけ解説させて頂きます。
トリートメントはヘアダメージするっていうけど?
筆者は2010年ごろ「トリートメントは髪を傷めます!」という台詞で理美容師業界に登場しました。でも完全オリジナルのDO-Sトリートメントはベストセラー商品だったりします…
また筆者は新型コロナ前は全国で理美容師さん向けの講習会・セミナーを開催していたのですが、そこでこんなことをよく言ってました…「ダメージした毛髪にはトリートメントは絶対に必要なものです!」かなり矛盾してますよね〜(笑)
結局トリートメントって髪を傷めるの?傷めないの?
これはそもそものお話になるんですが、筆者が美容師を始めた昭和の時代にはね、トリートメント以外にもリンスやコンディショナーというものがありました。(今でもありますが)
- トリートメント=毛髪内部の補修や補強・・・毛髪の内部に栄養成分や水分を浸透させて髪の状態を整えるもの。
- リンス・コンディショナー=毛髪表面に皮膜を貼り保護・・・コーティング成分でキューティクルを整え、パサつきを抑え艶や手触りを向上させるもの。
そう昔は、ヘアトリートメントで髪の内部を補修し、リンス・コンディショナーで表面コートしてツヤサラで櫛通りも良くしてたのです。
これが現在では多くの商品やサロントリートメントたちも、トリートメントだけで内部補強と表面コートの両方の効果を持つようになったんですね。
まず一つ目のトリートメントでヘアダメージする原因がこの皮膜成分による表面コートです!
髪の表面を皮膜成分でコーティングをするとキューティクルの動きが悪くなり、水分調整が上手くできなくなり『髪の命』と言われる結合水に悪影響を及ぼしパサパサに乾燥しやすくなり、チリも積もれば山となるような感じで少しづつ髪は傷んでいってしまいます、
【髪質改善】DO-Sすっぴん髪・素髪ヘアケアでヘアダメージ修復
ヘアトリートメントは髪を傷めます!?理美容業界を騒がせたすっぴん髪理論
そしてもうひとつのトリートメントによるヘアダメージの原因は… 内部補修の持続性UPです。
ヘアトリートメントの内部補修・補強っていうのは毛髪のケラチン等に類似した成分などを浸透させてダメージホールを埋めるのが主な目的なのですが、髪質改善や酸熱トリートメントなどのサロントリートメントでは、それらの成分を一定期間持たせようと吸着や架橋させたりする【持ちのよいトリートメント】を開発するようになったんですね。
平成の半ばぐらいに流行った髪質改善メニューのハシリだった『M3D』とか、現代なら酸熱トリートメントでも同じような原理なのですが、高温アイロンを使用したりコンプレックス系の反応や疏水架橋反応を応用したりして、トリートメント効果を長持ちさせるようにしていったのです。
しかし、無理して髪のケラチンに強く吸着させようと、高温加熱や薬剤反応をさせてしまうので逆に髪に負担をかけて少しの施術ミスでも逆にヘアダメージを起こしてしまうようになったのです。
この持続性UPのために無理した内部補修のせいで、本来はダメージホールの穴埋め程度ならダメージヘアまではならない理屈だったのに、トリートメントしたのにボロボロにヘアダメージしてしまった!な〜んて事例が増えていってしまいました。
そんな髪質改善やトリートメントの内部補修は最近グリオキシル酸やジマレイン酸など沢山の種類があり、どのような仕組みや作用で内部補強してるのかわかりにくいので解説していきますね。
基本的なトリートメントの内部補修の仕組み
まずは基本的なヘアトリートメントの内部補修の仕組みから説明していきましょう。
そもそも、ダメージした髪というのはこんな感じです。
↓
髪の毛の主成分であるケラチンタンパク質が流出してしまい【ダメージホール】という穴ボコが出来てしまった状態ですね。
このダメージホールができるのは髪のケラチンタンパク質同士とくっつけているシスチン結合が切れてしまうのが原因です!
そいつをわかりやすく拡大した図で説明していきましょう。
これが健康毛で沢山のシスチン結合がある毛髪の図です。↓
Sがシステインで二つを結合させているのがシスチン結合(ジスルフィド結合、S-S結合)です。
ヘアダメージしてシスチン結合が切断されシスチンが流出したダメージ毛はこんな状態です。↓
シスチン結合(S-S結合)が切れて切れっぱなしのシステインが残っていたりケラチン自体が流れ出てダメージホールが出来ている状態ですね。
そして最もベーシックでホームケアなどでも使われてるヘアトリートメントをつけるとこんな感じになります↓
髪の毛のシステインがなくなった部分を中心に毛髪類似成分等のトリートメント成分が浸透してダメージホールの穴埋めをして髪密度をUPしてハリコシも出してくれます。
これって、ただ浸透して内部に入り込むだけなので髪に悪さをしてヘアダメージさせることもないのですが、欠点としてはシャンプーするとすぐに落ちてしまい持続性がないということです。
染み込んでその日だけダメージを誤魔化すDO-Sトリートメントなどは典型的なこのタイプです。
持続性を良くするための反応型トリートメント
ヘアトリートメントでの髪の内部補修、補強ってのは基本的に髪のケラチンタンパク質などに類似した成分を浸透させてダメージホールの穴埋めをするのです。
こいつをもっと効果的に持ちもよくしようと多くのメーカーさんが考えたのが、平成頃から流行してきた2〜3ステップ方式のサロントリートメントやアイロンを使用したりする髪質改善メニューたちの【反応型トリートメント】と呼ばれるものたちです。
この持続性の高いサロントリートメントが開発されたのは本当にメーカーさん都合ですね(汗)美容室でトリートメントして1回シャンプーしたら、即効で取れてしまうようじゃサロンでの技術メニューとして問題がありますからね…
持続性のある反応型トリートメントには大きく3つのタイプがあります。
①トリートメント成分がケラチンにくっつく(架橋)タイプ
髪の内部に浸透したトリートメント成分をなんらかの反応で髪のシステインやシスチンに吸着させます。メーカーさんによっては架橋や結合などと説明してる場合もありますが、これだとず〜っと長いことくっついてるというイメージを持ちますが、髪のシスチンに異物が吸着するのですから、シャンプーで毎日洗ったとして、せいぜい1〜2週間もついていれば上出来なレベルです。
②トリートメント成分同士がくっついて大きくなり残留するタイプ
髪に浸透したトリートメント成分同士がコンプレックス等のなんらかの反応で強くくっつきあい大きくなって洗っても流出しにくくなって持続性を高めたタイプです。初期の頃の2〜3ステップのサロントリートメントによくあった反応型トリートメントです。より出にくくするために強力なコーティングを組み合わせる場合がほとんどです。
③上記の①と②を組み合わせたハイブリットタイプ
このハイブリットタイプは平成の頃流行したM3Dトリートメントなんかから始まったんですが、毛髪に浸透させた成分同士くっつけあって、しかもそれらを何らかの反応を使って髪のシスチンやシステインに強く吸着(架橋)させるトリートメントです。
ま〜でも、強く吸着・架橋するといっても持続性はせいぜい2〜3週間程度ですけどね。現代の髪質改善メニューやサロントリートメントの主流はこのハイブリットタイプになってます。
※ちなみに天然ヘナでのヘアトリートメントもこれと同じような理論で、吸着するというより髪のケラチンに絡みつく感じですけどね。
トリートメント成分が大きくなるのでたっぷり充満しやすいので髪密度アップ効果はとても高いのですが、高温アイロン処理による架橋や疏水結合など強い反応を使わないといけないので髪質やダメージ具合によっては髪に負担がかかるケースもあります。
したがってこのような理論で行われる最近の髪質改善トリートメント系は内部補強、ダメージホールの穴埋め効果も高いのですが… 過剰反応による損傷でボロボロのハイダメージ毛になる最悪の症例も多いです!
酸熱トリートメントのグリオキシル酸の反応は?
最近、髪質改善ヘアエステや髪質矯正メニューで酸熱トリートメントとか水素トリートメントと呼ばれたり、イミン結合(イミノ結合)で行う反応結合型ストレートパーマ、縮毛矯正とか言われる『グリオキシル酸』という成分を使用するメニューよく聞きます。
※メーカーさんにより「イミン結合」といったり「イミノ結合」といったりしますが、どちらでも良いみたいですね。
酸熱・水素トリートメントだけじゃなくアシッドシェイパー(ACID SHAPER)、サイエンスアクア、髪質改善ハリスノフトリートメントなど沢山あります。
このグリオキシル酸を使用した酸熱トリートメントや髪質改善メニューの理論は?
酸熱トリートメントを髪に塗布すると↓
髪の内部に、水素(H)を2つ持ってるアミノ基が入ります。
その状態で高温のアイロンを当てるとその水素が蒸発してアミノ基同士がイミン結合という結合でくっつきます↓
そして、イミノ結合したアミノ基が髪の毛のシステインやシスチンに吸着します。
これって正直いって、前章で解説してる③のハイブリットタイプと全く同じです(笑)
この酸熱トリートメントや③のハイブリッドタイプの髪質改善メニューやトリートメントで多くの方が誤解してるのが…
例えば、酸熱トリートメントで説明すると、アミノ基同士は結合はするけど、その結合したアミノ基(N-N)は髪のケラチンやシステイン、シスチンなどにはしっかりと結合はしないという事。
↓
厳密にいうと水素結合やイオン結合、疏水結合など結合にも色々あるのですが、例えば水素結合などは髪を濡らすと簡単に切れてしまう結合です。
ここでいう結合というのは普段の生活程度では切断される事の少ないシスチン結合(ジスルフィド結合)やペプチド結合をいいます。
ですから、昔っからよく髪の毛と同じケラチンタンパク質を髪に浸透させてヘアダメージ修復!などと言いますが… 実際は同じモノが浸透したとしても髪の毛には結合も同化も固定もしないので ただ入ってるだけで何回かシャンプーで洗えば流出するだけなのです。
どんな髪質改善メニューや酸熱トリートメントであろうが、髪の中に入った成分が強く結合する訳ではない!
決してヘアダメージ修復するわけではない!ということは理解しておかないといけません。
グリオキシル酸だとアミノ基(NH2)が内部まで沢山入るので、ちょっとした癖毛程度なら少しストレートぎみに形状変化するぐらい効果があり人気も高いのですが、それだけ結合、架橋、吸着等の反応もきついのでボロボロにダメージする危険性もあったりします。ここらへんのトラブルの多さは、昔流行ったM3Dに近い感じですね…
そうこういった髪質改善メニューや酸熱トリートメントなどは効果はわかりやすいけど、持続性(持ち)を良くしようとすればヘアダメージする可能性もあるのです。
ま〜グリオキシル酸の酸熱トリートメントも理論的には 極 普通 の髪質改善メニューですね。
※グリオキシル酸以外にも、レブリン酸、リンゴ酸、サルチル酸、グリコール酸など色々な成分を使用するサロンもありますが、基本理論はほぼ同じです。
あと、こういった持続性のある酸熱トリートメントや髪質改善や天然ヘナなどの髪の内部補強するタイプの場合は、ヘアカラーリング後にすると毛染めで発色した色素を押し出したり壊したりするので、せっかく染めたヘアカラーの色が抜けて褪色してしまう場合もあります。
プレックス系のジカルボン酸/ジマレイン酸などの仕組み
ここ数年、ブリーチやハイトーンカラーリングの施術時にプレックス系の添加剤がヘアダメージが少なくなると人気です。
シュワルツコフさんやロレアルさんはジカルボン酸(マレイン酸)を使用してますし、世界中で人気のオラプレックス(OLAPLEX)は世界特許のジマレイン酸を使用してます。
また美容院によってはジカルボン酸を使用しても酸熱トリートメントとか髪質改善トリートメントとネーミングしてるとこもありますので注意してください。
これらのアルカリの高いブリーチ剤やライトナー、ハイトーンのカラー剤に添加するタイプのプレックス剤の理論を紹介しとくと…
まずは、ブリーチ剤に混ぜられた活性ケラチンと呼ばれるジカルボン酸(マレイン酸)が髪に浸透するとこんな感じに髪のシステイン・シスチンに吸着架橋します↓
このジカルボン酸・マレイン酸系の架橋・吸着は持続性はそんなに良くはありませんが、高温アイロンも疏水化もしないので架橋や反応によるヘアダメージはほとんどありません。
持続性はあまり良くありませんが、髪に負担をかけないでブリーチ毛にハリを出してくれるのでかなり優秀な成分です!
※毛染めでのヘアダメージの大半はブリーチ(脱色)することですので、プレックス剤でダメージレスになる訳ではありません。
そしてオラプレックスのジマレイン酸はもっと優秀です…
ジマレイン酸はマレイン酸が二つくっついた成分なんですが、ジカルボン酸やマレイン酸は髪のシステインに架橋するのは1箇所だけだったのですが…
ジマレイン酸は2箇所吸着・架橋するトコがありますので↓
連結して架橋するので、より内部補強の効果が高まります!
ブリーチ剤で脱色すると、激しくヘアダメージしてテロテロのダメージホールだらけになりますが、これらのプレックス剤を使用すると髪密度アップするので強度もあまり落ちません。
デメリットとしては、パーマ、ストレートパーマ、縮毛矯正などに使うと2剤でのシスチン再結合の邪魔になる場合が考えられるのであまり使えませんし、ヘアカラーリングでもブリーチやハイトーンカラーなどのきついアルカリ性の薬剤のみ使用可能ってこと、あと薬剤にミックスするとアルカリが少し弱くなるのでブリーチ力も少し弱くなってしまいます。
※髪密度UPでダメージが少なくなったように感じますが、明るくブリーチした分だけヘアダメージはちゃんとありますのでノンダメージ・ダメージレスになる訳ではありません。
信用できないトリートメントのデタラメ理論
今まで書いてきたような髪質改善メニューや酸熱トリートメント、プレックス剤などは化学的にも納得できる理論や効果効能がそれなりに認められているのですが…
理美容業界にはまったく信憑性のないデタラメなトリートメント成分や胡散臭い理論がとても沢山存在していますので注意してください!
例えば…
- ケイ素(シリコン・シリカ)などのミネラルやビタミンや活性酸素など、まるで健康食品のような説明をする製品やトリートメントシステム。
- 水素水、電子水、海洋深層水、ミネラルアルカリ還元水、高機能還元水などの化学的根拠のない怪しいお水系。
- ヘアケアやスカルプケア製品なのに、オーガニック信仰や経皮毒、デトックス、好転反応などあり得ない情報で洗脳してくる系。
- ヘアダメージは絶対に治らないのに「どんなヘアダメージでも絶対に治ります!」な〜んて宣言しちゃう髪質改善系のトリートメント(汗)
これら以外でも、アルカリが悪で弱酸性なら全て良い!とか… ノンアイロンの縮毛矯正ならダメージレスとか… 理美容業界にはデマや思い違いがとても沢山あります。
これらの多くは【商人(あきんど)精神満点のメーカーさん】が販売目的で情報操作してる部分が多いので実際の理論をしっかりと理解したほうが良いですね。
典型的な例として、ほとんどの方が毎日シャンプーするこの令和の時代に髪質改善や酸熱トリートメントは出来るだけ日持ちするのを目指してるってちょっとおかしいですよね?
これってメイクで例えたら、3週間どんなに洗顔を繰り返しても絶対に落ちないファンデーション!ってことですからね〜!これってどう考えてもお肌ボロボロでしょ(汗)
絶対的な基礎知識として…
ツヤサラの見た目や手触りはほとんどが表面皮膜!
日持ちするトリートメントほどヘアダメージする!
髪は死滅細胞なので一度ダメージしたら治らない!
ミネラルやイオンやお水系でダメージ修復はあり得ない!
ここらぐらいは必ず覚えておきましょうね♪
髪質改善メニューは内部補強と表面皮膜!
今回書いてきた髪質改善メニューや酸熱トリートメントやプレックス剤の毛髪内部の補強理論は理解できましたか?ここで最終確認しておきますが、今回書いたのは髪質改善、酸熱トリートメントやブリーチに使うプレックス剤などの 毛髪の内部補強のみ のお話ですからね!
皆さんがトリートメントや髪質改善メニューをしてヘアダメージが治ったと感じるのは8割がたツヤサラにする表面皮膜・キューティクルコーティングですからね♪メーカーさんたちの商品説明でもヘアダメージが修復するかのようなお話もほぼ表面皮膜と言ってもいい感じです。
今回の内部補強では髪の引っ張り強度が上がったり、ハリコシ感がアップする程度で結構わかりにくい場合もあるので理解しといてくださいね。
それに髪質改善トリートメント系で少しずつヘアダメージしていくのも表面コーティングによるところが多く、内部補強でのダメージは、酸熱トリートメントとかで施術する美容師さんの反応の判断ミスや髪質診断の失敗とかによる場合がほとんどです。
ま〜結局は、トリートメント効果を長持ちさせよう!って思うから、何らかの化学反応を使ったり、アイロンで高温加熱したりして、逆にいきなりボロボロのダメージ毛になったりします。
あと表面皮膜にもツヤサラに見せるだけでなく、皮膜を貼って内部のトリートメント成分を流出しにくくするために髪質改善メニューの場合は特に強力なコーティングをしたりするのです。
髪に負担をかける持続性UPのための反応と強い表面皮膜!
これで髪質改善メニューや酸熱トリートメントでダメージする人が増えてます(汗)
現代の人は毎日シャンプーするのが一般的なので… シャンプーで毎日洗って、毎日トリートメントで内部補強して必要最低限の表面皮膜をする程度が一番ヘアダメージが少なくなると思うんですけどね…