【第3回】「酸リンスでアルカリ除去」の罠:アシッド剤設計と完全除去システム

パーマや縮毛矯正、ヘアカラーの施術後、「残留アルカリを除去するために酸リンスをつけている」「ヘマチンを塗布しているからアルカリ中和は万全」と考えていないでしょうか?

実は、従来の毛髪科学の常識とされてきた「クエン酸水やヘマチンによるアルカリ中和は不可能」というのが、化学的な真実です。

ヘマチンにはメルカプト基の酸化促進や消臭効果はあっても、酸としての水素イオンを放出してアルカリを打ち消す「酸中和能」はほぼ備わっていません。また、一般的な希釈クエン酸水などの酸リンスは、pHが2〜3台と低すぎてキューティクルを過収斂(過度な引き締め)させ、キシみやビビリ毛の原因を作る一方で、頑固な残留アルカリを中和するために必要な「酸度(アルカリ中和能)」が圧倒的に不足しています。その結果、内部にアルカリと還元剤を閉じ込めたまま放置され、数週間後のパサつきや切れ毛(遅延ダメージ)を招いてしまいます。

さらに、2剤の酸化前に髪を酸性〜弱酸性に落としすぎると、システイン(S)と水素(H)が解離せずチオラートが消滅するため、肝心のS-S再結合そのものが阻害されてカールのダレや縮毛矯正のクセ戻りを引き起こすという重大なジレンマも存在します。

本記事では、なぜ従来の酸リンスやヘマチンではアルカリ中和ができないのかという化学的根拠を紐解き、髪を過収斂させない「pH 5.0(等電点)をキープしながらアルカリ度7mlを粉砕する特殊アシッド設計」と、中和後の成分を髪に残さず排出しきる「本質的アルカリ完全除去システム(中和・洗浄・保護)」をプロ向けに徹底解説します。

パーマや縮毛矯正の中間水洗で還元剤は流れません!

2015年にミルボン中央研究所の鈴田さん、信州大学の濱田教授、故新井幸三博士が発表した論文「パーマネントウェーブ処理におけるチオグリコール酸還元後の水洗による毛髪内ジスルフィド架橋の再生機構」により、業界の常識だった「お湯でしっかり流せば還元剤は抜ける」という前提が覆されました。

詳しくは↓
パーマの中間水洗と毛髪内の架橋再生の仕組み

「毛髪内部の非イオン型(分子型:-SH)還元剤は、どれだけ長時間お湯で中間水洗しても流出せず、内部に高濃度で残留する」

水洗で流れるのは水溶性のイオン型のみ。疎水部に吸着した非イオン型還元剤とアルカリは毛髪深部に居座り続けます。

一般的な酸リンスが失敗する理由(pHと酸度の混同)

残留アルカリを処理しようと従来の酸リンス(クエン酸等)を使うと、2つの致命的な失敗が起こります。

  1. pHが低すぎる(過収斂の罠):
    pH 2〜3の強酸性をつけるとキューティクルが急激に収縮し、毛先がキシむだけでなく、内部にアルカリと還元剤を閉じ込めてしまう。
  2. 薄めると酸度が足りない(中和力不足):
    過収斂を防ごうとお湯で薄めてpH 5程度にすると、アルカリを中和する絶対量(酸度)がゼロになり、アルカリが抜けずに残る。
  3. 酸化不良のリスク:
    2剤の酸化前に毛髪を強酸性にしてしまうと、システイン(S)と水素(H)が解離せずチオラートが消滅するため、S-S再結合そのものが阻害される。

解決策:クエン酸 × アルギニン緩衝系(DO-Sアシッド)

このジレンマを打破するのが、クエン酸に塩基性アミノ酸等を組み合わせ特殊製法で作った高濃度緩衝設計のDO-Sアシッドです。

酸度が強く、本当にアルカリ中和が出来るDO-Sアシッド
  • pH 5.0(等電点)固定: キューティクルを過収斂させず、浸透経路を開いたままにする。チオラートを完全失活させないため酸化も妨げない。
  • アルカリ度7mlを中和可能: pHを危険な酸性領域に落とすことなく、髪の奥深くに潜む頑固な残留アルカリを中和し、水溶性の「塩(えん)」へ変換する。
    ※酸度には共通の明確な基準がないため、アルカリ度7mlのパーマ1剤を中和できるのを目安にしています。

詳しくは↓

ヘアカラーのアルカリ除去剤・中和の真実|クエン酸・リンゴ酸・ヘマチンで髪の傷みは防げるのか?

DO-Sアシッドの使用方法は?シャンプーに混ぜても良いですか?

「中和・洗浄・保護」で完結させるアルカリ完全除去

アシッド剤はアルカリを「中和して塩に変える」までしかできません。本質的な除去には、その後のシャンプー&トリートメント設計が不可欠です。

[ Step 1: 中和(DO-Sアシッド、DO-Sアルカリオフ) ]

pH 5.0で酸度の高い緩衝剤で、過収斂させずに深部アルカリを水溶性の「塩」に変換する

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[ Step 2: 洗浄(DO-Sシャンプー) ]

高級アルコールほど強すぎず、アミノ酸・ベタイン系ほどマイルドすぎない適度な界面活性剤で

浮き出た「塩」と残留還元剤を確実に包み込んで洗い流す

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[ Step 3: 保護(浸透型DO-Sトリートメント) ]

強固なシリコン皮膜や強カチオンを避け、ノンシリコン・浸透型処方で

内部補強しつつ、残留物の自然脱出経路を塞がない

手触りを良く見せようと強力なシリコン被膜で蓋をしてしまうと、内部に残ったわずかな成分を密閉し、数週間後のシステイン酸生でヘアダメージを招きます。

「過収斂させずに中和し、適度な洗浄力で洗い流し、被膜で閉じ込めない」。この一連のシステムが連動して初めて、1ヶ月後・半年後も劣化しない本物の美髪が完成します。

髪質改善の嘘?すっぴん髪へ導くDO-Sシャンプー&トリートメント

【第3回】理美容師に検索されやすい実践Q&A

Q1. 「ヘマチン」をつけるとアルカリが除去・中和できると聞きましたが、本当ですか?

A. ヘマチン単体にアルカリを中和・除去する能力はありません。

ヘマチン分子の中心にある鉄錯体は、残留した還元剤(メルカプト基)のキャッチ・酸化促進や、脱臭、ケラチンとの結合補強に働きます。しかし、アルカリを打ち消すための水素イオンを放出する酸中和能は持っていません。市販のヘマチン製品でアルカリが落ちたと感じるのは、基剤に配合されているクエン酸等の酸性成分による作用であり、ヘマチンそのものが中和しているわけではありません。

Q2. 市販のクエン酸水(希釈酸リンス)でアルカリを中和してはいけない理由は何ですか?

A. 「pHが低すぎて過収斂を起こす」一方で「酸度(アルカリを中和する絶対量)が足りない」からです。

クエン酸をそのまま溶かした水溶液はpH 2〜3前後の強酸性を示します。急激な酸性化はキューティクルを過収斂させ、手触りをガシガシにするだけでなく、毛髪内部の通り道を閉じてアルカリと還元剤を芯に閉じ込めてしまいます。逆に、過収斂を防ぐためにお湯で薄めてpHを上げると、今度は酸度(中和できる体力)がゼロになり、強いアルカリ度を中和しきれず髪内部に残存してしまいます。

Q3. なぜ「pH 5.0」を維持したまま「アルカリ度7mlを中和できる酸度」が必要なのですか?

A. キューティクルを過収斂させず、内部のアルカリを水溶性の「塩(えん)」へ安全に変換するためです。

毛髪の等電点付近であるpH 5.0にロックされた緩衝系アシッド剤を使うことで、浸透経路を開いたまま髪の深部まで薬剤を行き渡らせることができます。同時に、高い酸度(ストックされた中和力)が毛髪内部の頑固なアルカリ(アルカリ度数mlレベル)を次々と中和し、洗い流しやすい水溶性の塩に変えて無力化します。

Q4. 2剤(酸化)の直前に酸リンスをつけると、パーマがダレたり縮毛矯正のクセが戻ったりするのはなぜですか?

A. 酸性に傾きすぎると、システイン(S)と水素(H)が解離せず、S-S結合の酸化反応が止まるからです。

毛髪が酸化剤によってS-S再結合を起こすには、チオラートイオンの状態で存在している必要があります。2剤塗布前に強い酸リンスでpH 4以下に落としてしまうと、全て非イオン型のチオール基に戻ってしまい、酸化剤がアタックできず酸化不良(カールのダレやうねり戻り)を引き起こします。

Q5. アシッド剤で中和するだけでは「アルカリ完全除去」にならないのですか?

A. アシッド剤は「中和して塩に変える」までであり、その塩を外へ洗い流す工程が必要だからです。

中和によって生じた塩や残留還元剤は、毛髪内部に留まったままでは後日のパサつきの原因になります。マイルドすぎて油分・汚れを抱え込めないベタイン系やアミノ酸系単体ではなく、適度な洗浄力を持つシャンプーで包み込んで物理的に洗い流すことで、初めて完全除去が成立します。

Q6. アルカリ処理後のトリートメントで「強力なシリコンや高カチオン被膜」を避けるべきなのはなぜですか?

A. 毛髪表面を強固に密閉してしまい、残留物質の脱出経路を塞ぐからです。

施術直後の手触りをごまかすために重たい高重合シリコンや4級カチオンでフタをすると、内部に残った微細な成分や臭いが抜けなくなり、数日~数週間かけて内部から毛髪を腐食させます。アルカリ処理後は、被膜を作らずに内部を補強する「ノンシリコン・浸透型トリートメント」を選び、残留物が自然に抜けていく通り道を確保するのが鉄則です。

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コラム執筆者プロフィール
森下 秀彦(美容師歴約50年・毛髪専門家・DO-S製品開発者) 全国の理美容師へパーマ・縮毛矯正の薬剤理論を指導する元美容師。「世の中のヘアダメージで悩む人を救いたい」という想いから、独自のすっぴん髪・素髪理論に基づいたヘアケア情報を発信しています。

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