最新のコールドパーマは持ちが良く、ヘアダメージが少ない事が重要です!
パーマをかけてもダメージした感じは少ないし手触りも良いけど、最初の1〜2週間で少しダレてかかりがゆるくなってしまう。
ダメージの少ないノンアルカリの優しいパーマ液でかけてるから傷んではないけど、1ヶ月ぐらいでパーマが落ちてしまう。
髪質やダメージ具合によってはある程度持ちが悪いとか仕方ない場合もあるけど、ノーマル毛〜健康毛でも1ヶ月も持たないとか、パーマ施術後1週間程度でカールがダレる傾向があったりするなら、貴方のしているコールドパーマは間違っているのかも知れません。
あと美容師さんに「パーマは何が原因で髪が傷むのですか?」って質問すると… 一番多いのは「パーマ液がアルカリだからです!」って感じで答えてくれます。
が… これは実に的外れな間違った答えなのです(涙)
まだまだ美容師にとってパーマは大切な技術です
昭和の頃は美容室でのパーマ比率は多いとこで40%ぐらいありました。来店されるお客さんの10人に4人はパーマをかけるという感じです。そして平成になり縮毛矯正やヘアカラーブームもあり徐々にパーマをする人が減少していき、現在、若いお客さんメインのサロンなどではパーマをかける方がほとんどいないという事もあるそうです。
ただ最近はメンズのパーマ需要が増えてきたりしてますし、ミドル〜シニア世代の方で特にショートヘアの方などではボリュームや動きを出す髪型をする場合などはパーマが必要だったりします。
そうです… まだまだパーマは理美容師さんにとって大切な技術の一つなのです!
この『ヘアダメージ解消コラム』を書いている筆者はまだ現役美容師だった2010年から『場末のパーマ屋の美容師日記』というブログを書き始めました。
場末のパーマ屋というぐらいですから、パーマは得意分野で美容専門誌でパーマ特集に出演したり、毛髪理論の日本の第一人者の新井元教授や大手美容メーカーさんの開発の方達とパーマ、縮毛矯正や毛髪理論等の研究をしてたり、新しい薬剤の研究開発をしてたり…
新型コロナ前までは全国で理美容師さん向けにパーマや縮毛矯正などのセミナーもしてました。
このコラム記事では、そんな美容師であり、パーマや毛髪理論研究者であり、パーマや縮毛矯正剤やヘアケア剤の開発者でもある筆者が最新のコールドパーマ技法である、従来のコールドパーマより『ダメージが少なく、持ちが良い』を実感できる方法(薬剤・技法等)を紹介していきます。
ヘアダメージが少なく、持ちのよいコールドパーマとは?
毛染めや縮毛矯正をしてる方や細毛、軟毛、猫っ毛の方などがパーマをするとヘアダメージが多かったり、短期間でパーマがダレたり取れたりしやすいですよね!?また髪質に合わない強い薬剤や施術方法を間違えるととても髪が傷んだりします。
逆に太くて硬くて健康毛の髪の方なら強い薬剤でかけるとなかなか取れない持続性のよいパーマが可能だったりしますよね。
なぜこういう状態になるのか?出来るだけヘアダメージを少なく持ちのよいパーマをするには?を考えるには美容学校で習ったパーマ理論の基本である【S-S結合の切断と再結合】からしっかりと理解しなければいけません。
パーマ理論の基本中の基本、1剤でのS-S結合の切断と2剤での再結合 とは?
髪の毛はシスチンタンパク質で出来ていて、それらはS-S結合(ジスルフィド結合)といわれる側鎖で強く結合されているんだね。
そしてパーマというのは1剤の還元剤でそのS-S結合を切断し、ロッドで巻いてストレートの時と違うシスチン同士を2剤の酸化剤の反応で再結合させて形状を変えるんだ↓
現場で働いてると忘れがちだけど、美容学校で習ったのを思い出したかい?(笑)でも実際はこんなに教科書通りには行かないんだよね…(汗)
現実的には1剤で切断されたS-S結合が綺麗に全て再結合されないで、いくらかは切れっぱなしのままなんだね↓
この切れっぱなしのシスチンのせいで髪の強度も落ちるし、シスチンタンパク質が流出してダメージホールになったりもしてどんどん髪は傷んでいくし、この切れっぱなしのシスチンが多くなるとカールやウェーブもダレやすく持ちも悪くなってしまうのです。
ヘアダメージが少なく持ちが良いパーマというのは、切れっぱなしのシスチンが少ないパーマということなのです。
なぜ切れっぱなしのシスチンが残ってしまうのですか?
筆者は昭和50年代から美容師をしてますが、平成の半ばぐらいまではパーマのダメージといえばアルカリ性が髪に悪いぐらいしか言われていませんでした。で〜筆者が『どS美容師』として美容専門誌やセミナーで活躍してた頃に日本の毛髪研究の第一人者の新井幸三先生や大手美容メーカーの薬剤開発者さんたちとパーマ革命とも言える研究や理論整理を行なったんです。
例えばね、これが↓パーマやストレートパーマ・縮毛矯正での科学反応式
RSH ⇄ RS + H+
KSSK+RSH ⇄ KSH+KSSR
KSSR+RSH ⇄ KSH+RSSR
2KSH+O→KSSK+H2O
KSH+RSH+O→KSSR+H2O
RSH+RSH+O→RSSR+H2O
それまではこんな反応があるなんて知らない美容師さんが多かったんだよね。ま〜今でもこういう難しい反応式があるんだな!ってぐらいでそんなに詳しく知る必要もないので安心して下さい(笑)
この反応式だけじゃなく、還元剤の種類によるpkaの違いやpHとアルカリ度や『中間水洗してもイオン化してない還元剤は流れない』『髪が乾くと反応は止まる』など多くのパーマ理論の変化や再構築が進んだのです。
そこで前章で書いたように昭和の時代に習ったようなパーマ理論とは変わった部分も多く…
現代のパーマ理論でのヘアダメージやダレやすく持ちが悪くなっちゃう主原因は【切れっぱなしのシスチン】で、それらの原因は今のところこれら↓で起こってしまうと考えられています。
①パーマ工程で出来てしまうミックスジスルフィド
②1剤の添加剤や前処理剤、中間処理剤の影響
③アシッド剤の塗布タイミングと1剤や2剤のpH
ではこれらを説明していきますね。
パーマでのヘアダメージの原因の一番はミックスジスルフィド
ダメージレス、ノンダメージなパーマなんて絶対にありません!パーマをかけたほうが前より綺麗な髪になるのは、髪の毛の表面コーティングでツヤサラに見せているだけで、髪の毛自体は絶対にダメージしていますし、ノンアルカリや酸性〜弱酸性の薬剤使用だから髪が傷まないということもありません。
そのパーマダメージの中でも一番はこの『ミックスジスルフィド』です。ではまずミックスジスルフィドとはなにか?どうしてできるのか?から説明していきましょう。
まずパーマ・ストパー・縮毛矯正の1剤のチオなどの還元剤が髪のS-S結合を切断するのですが、実際はただ切断するだけではなくこんな感じになってます↓
図の赤いSがシスチンなんですが1剤でS-S結合と切ると、シスチンにH(水素)がくっついたものとシスチンにミックスジスルフィドがついたものの2種類が出来ます。
※図のジチオ(ジチオジグリコール酸)というのはS-S結合を切断するのに還元剤(ここではチオグリコール酸)からHを取って残ったカスみたいなものなのでココでは気にしなくてもいいです。
そしてパーマ2剤でのS-S再結合というのはH(水素)に酸素を与えてHを水(H20)に変え、S-S結合を結合させていきます↓
すると… ミックスジスルフィドがついてるS(シスチン)は再結合できないのです!
その後シャンプーやドライヤー・アイロンなどでの熱でミックスジスルフィドは取れることもありますが、切れたシスチン(S)は再結合できず 切れっぱなしのシスチン として髪に残るのです。
このミックスジスルフィドによる再結合出来ない切れっぱなしのシスチンがパーマやストパー、縮毛矯正等でのヘアダメージの一番の原因なのですが…
これは還元・酸化で必ず発生する科学反応で ミックスジスルフィドを作らないようにする事は不可能です。
だからノンアルカリだろうが弱酸性だろうが還元・酸化反応をする限り髪の毛がまったく傷まないということはありえないお話なのです。
パーマをかける限り、ミックスジスルフィドでの切れっぱなしのシスチンによるヘアダメージは絶対に避けられない!と覚えておいてください。
1剤の添加剤や前処理、中間処理剤での切れっぱなしのシスチン
ミックスジスルフィドによる切れっぱなしのシスチンはどうしようもないのですが、これからはある程度防止(減少)することが可能な切れっぱなしのシスチンのお話をしましょう。
まず最初は筆者が以前セミナーなどでよく言っていた「処理剤なんて下水の肥やし」関連のお話になります。
現在のパーマ剤の多くは、パーマ後にダメージを感じさせないように感触向上成分が多く配合されてますし、1剤の前に髪のダメージを少なくするために前処理剤や中間処理剤としてPPTやトリートメント剤などをつける事も多いです。
感触向上性成分やPPTなどが配合された1剤や前処理・中間処理剤をつけた髪の還元時はこんな感じになってるハズです↓
これでは還元剤の反応の邪魔をしてしまいますよね!
ダメージ部分等に前処理剤をつけるのは、こうして反応の邪魔をして反応しすぎ(かかりすぎ)を防ぐという意味合いもあるのですが、どちらにせよS-S結合の切断や再結合の邪魔になるのは事実です。
特に問題なのはこういう1剤の感触向上成分やPPTなどの処理剤が沢山入ってしまい、2剤の時に再結合が上手く出来なくて切れっぱなしのシスチンが増えてしまう事なんです。
例えばダメージ毛等で弱い反応をしないといけない場合は、わざわざ処理剤をつけて強い還元剤を使うより、シンプルに弱い薬剤を使えばいいだけなんですよね。
パーマ・縮毛矯正では、できるだけ感触向上成分やPPTなどの補修成分などが入ってない1剤がいいし、前処理剤や中間処理剤も使用しないほうが『切れっぱなしのシスチン』を少なくする事ができるのです。
アシッド剤や酸リンスの塗布タイミングと1剤・2剤のpH
どうも多くの理美容師さんたちは『アルカリ』が大嫌いみたいですね(笑)
パーマやストパー・縮毛矯正やヘアカラーで、なんで髪が傷むのか?って話になると一番に「アルカリが悪い!ヘアダメージの原因は薬がアルカリ性だからである」って言ったりします。
だからか?昔っからアルカリ性の1剤で還元した後、パーマの2剤をつける前に【アルカリ中和】をするためにアシッド剤や酸リンス、バッファー剤といわれるクエン酸ベースの酸性の中和処理剤をつけつようになってます。美容薬剤メーカーさんのパーマ施術マニュアルなどでもだいたい2剤前にアシッド剤での中和工程があります。
実はこの昔から定番の2剤前のアルカリ中和が大間違いだったのです!
そいつをわかりやすく説明していくには、まずパーマでの2剤(酸化剤)の働きから説明する必要があります。
1剤でS-S結合が切断され、シスチン(S)に水素(H)がついた状態のとこに1剤の酸素(O)が入っていきます↓
2剤の酸素(O)がシスチンについた水素(H)を2つ奪い水(H2O)になるので、水素をとられたシスチン同士が再結合します↓
これがパーマでS-Sを再結合する2剤での酸化反応の理屈です。
ただし… この2剤の酸化反応時の髪の毛のpHが大問題なのです!
この2剤の反応時に髪がアルカリ性の状態だった場合は↓
髪の毛のケラチン(S)についてる水素(H)がくっついたり、少し離れたりを繰り返している状態なので、2剤の酸素(O)がくるとS-S再結合がしやすいのです。
が…
2剤の酸化反応時に酸性だった場合は↓
髪が酸性になってる場合は、シスチン(S)に水素(H)がくっついているので、アルカリ性の状態と比べるとS-S結合がしにくいのです。
だから2剤の前にアシッド剤をつけたり、酸性の1剤や2剤を使用すると、S-S再結合がしにくく『切れっぱなしのシスチン』が増加してヘアダメージして持ちの悪くなってしまうのです。
出来るだけ持ちが良くヘアダメージの少ないパーマをするには
これまで書いてきたように、ミックスジスルフィドができるのはどうしようもありません。
ミックスジスルフィドがダメージレスのパーマが絶対に不可能な理由ですからね。
出来るだけヘアダメージが少なくて、ダレにくく持ちのよいパーマをするには…
- 前処理剤や中間処理剤は出来るだけ使用しない
- PPTや感触向上成分が入ったパーマ剤を使わない
- アシッド剤は2液前ではなく2液処理後に行う
- 酸性〜弱酸性の1剤や2剤は使用しないようにする
ここらへんに気をつけて、出来るだけ『切れっぱなしのシスチン』を増やさないようにして持ちがよくダメージの少ないパーマを行いましょう。
DO-Sでは出来るだけ髪が傷まないで持続性の良いパーマを実現するために薬剤やアシッド剤を作っています。
◎余計なPPTや感触向上剤等を必要最低限にしたシンプル設計で、前処理剤を使用しなくても計算しやすいパーマ1剤たち
プリンとしたしっかりカールが作りやすいシステアミンとチオグリコール酸のハイブリットタイプ↓
明日からすぐ使える!昔ながらの定番チオグリコール酸タイプ↓
◎2剤はデジタルパーマやエアウェーブにピッタリなオキシタイプとpH8程度のアルカリ性でS-S再結合がしやすい設計のブロム酸の3%と6%の2剤↓
◎pH5の弱酸性で酸度が80ml程度もある『DO-Sアシッド』↓
カラーやパーマのヘアダメージにはアルカリ中和、除去するのが大切!
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