失敗しやすいストレートパーマ・縮毛矯正
ストレートパーマや縮毛矯正の施術ミスで、髪がボロボロに傷んでビビり毛にしてしまったという事例を耳にします。そしてそれに伴い、縮毛矯正恐怖症に陥った理美容師さんがドンドン増えているそうです。
くせ毛をストレートに伸ばす縮毛矯正は、平成のはじめ頃に登場しました。ただその画期的な施術は、薬剤を使用する美容室メニューの中でも、脱色(ブリーチ)と1・2を争うヘアダメージの多いメニューで知られています。
縮毛矯正という技術が登場してしばらく経過していますが、ここ10年ぐらい、ヘアカラーにおけるブリーチ毛やエイジング毛、猫っ毛などのお客様を対象にした縮毛矯正で、理美容師さんが失敗してチリチリ、ジリジリのビビり毛になるケースが増えています。
理美容師さん達の失敗を出来るだけ防ぐにはどうしたら良いのでしょう。
ストレートパーマと縮毛矯正の違い
くせ毛で悩んでるお客様で、サラサラのストレートヘアに憧れる方は多くおられます。そういうお客様に「ストレートパーマしたいんだけど…」と相談された時、あなたはストレートパーマと縮毛矯正の違いをちゃんと説明できているでしょうか。
一般のお客様は「縮毛矯正」という言葉がよく分かっていなくて、すべて「ストレートパーマ」ぐらいに認識してる方が多いです。
- ストレートパーマ(ストパ) : 現在かかってるパーマを落とす場合や、軽いくせ毛を少し伸ばしてブローしやすくする程度です。工程的には、1剤(還元剤)と2剤(酸化剤)の反応とコーミングや熱の無いアイロンで梳かす程度で行います。
- 縮毛矯正 : ヘアダメージのリスクが高いですが、くせ毛をストレートに伸ばすのならこの縮毛矯正になります。工程的には、1剤(還元剤)と2剤(酸化剤)の間に高温のストレートアイロンやブラシでストレートにブローする工程が加わります。
最近ではチオなどの還元剤ではなく、グリオキシル酸等で行う「酸熱トリートメント」「髪質改善ストレート」もありますが、これらはくせ毛をストレートにするほどの効果はありません。
トラブルばかりの縮毛矯正・ストレートパーマ
ストレートパーマは昭和50年代、縮毛矯正は平成の初め頃に登場しましたが、これらストレートパーマや縮毛矯正は昔からトラブルの連続でした。
昭和の頃のストレートパーマは、プラスチック製のパネルに毛束を貼り付けていたため、髪の根元部分に還元剤が溜まって折れ毛になり、そこから断毛するトラブルが多発して訴訟問題になることがありました。
平成になって縮毛矯正が登場しますが、当時はツヤツヤ、サラサラストレート、美髪になれるが売りで「トリートメントでストレートヘアに!」このような宣伝文句が流行りました。 縮毛矯正(ストパー)専門店なども出来るほどでした。
しかし…、 最初は憧れのツルピカストレートになっても何度か施術を重ねると酷くダメージして、数年経つと縮毛矯正専門店は姿を消してしまいました。縮毛矯正でツヤサラになるのは髪の表面についてるポリマー被膜だけで、髪の内部は凄く傷んでボロボロになってしまいます。
ストパーブームに少し遅れてやってきた「ヘアカラーブーム」により、縮毛矯正やストパーによるトラブルはより深刻化しました。
ヘアカラーのブリーチ(脱色)や、エイジング毛の白髪染めで増えたダメージホールの影響で、縮毛矯正をすると凄くダメージしたりチリチリのビビり毛になる方が増えたのです。
昔からストパー・縮毛矯正は、とても髪を傷めるメニューなのです!
ストパー・縮毛矯正でダメージする理由
ストレートパーマ・縮毛矯正でのトラブルや失敗する原因には、大きく3つあります。
- リタッチ塗布をしないで、同じ部分を何度も還元する。
- 縮毛矯正でアイロン操作ミスやブローでの技術ミス。
- 1剤(還元剤)のアルカリ暴走等での過還元トラブル。
あとは少し細かいですが、リタッチ塗布や過還元トラブルに共通するもので、1剤を塗布した時の塗布量や塗布スピードなどが関係する場合もあります。
上記の失敗する原因でも、リタッチ塗布やアイロンやブローでの失敗、この2つのミスに関しては昔から変わっていませんが、3つ目の過還元を原因とするトラブルが最近急増しているのです。
リタッチ塗布しないでチリチリのダメージ毛に
ストレートパーマ・縮毛矯正は、パーマと比べるととても強く(多く)還元します。
※還元とは : 髪のS-S結合を切断することです。沢山のS-S結合を切るとダメージも多いのです。
しかも理論上、切断したS-S結合の3〜4割は再結合できず、切れたままでダメージします。
したがって、同じ部分に縮毛矯正を数回繰り返すと激しくダメージしてしまうため、既矯正部には還元剤を塗布しない『リタッチ塗布』を行わないといけません。
そして以前に縮毛矯正をしている部分にどうしても薬剤を塗布しなければいけない状況では、その部分に塗布する1剤はとても弱い薬剤にしなければいけません。
アイロンやブローでの施術ミスでハイダメージ毛
ブロー式の縮毛矯正の場合は、濡れている状態の時にブラシで強くテンションをかけて引っ張ってブローした場合に髪が傷みやすいです。
ブロー式の縮毛矯正では、髪が濡れている状態の時にドライヤーの熱を与えないとくせが伸びてくれないので、その時に髪を強く引っ張らないように注意しましょう。
アイロン式の縮毛矯正の場合は、髪が濡れていたり湿っていたりなど、水分が多くある状態の時に高温のアイロンでジュジュ〜っとやってしまいダメージさせます。
あと温度が高すぎたりテンションが強すぎてもかなりダメージさせてしまいますので、アイロン操作には十分に注意してください。
縮毛矯正1剤による過還元・過軟化・過膨潤
縮毛矯正で1剤塗布して放置タイム
↓
還元テスト… もう少しかな?追加5分
↓
還元テスト… う〜む?もうちょい?追加5分
↓
還元テスト… ラップ外した途端、ビビり毛(涙)
ここ最近、若手の理美容師さん達の間で増えているのが ”縮毛矯正の還元恐怖症”な方です。
少し細くて柔らかい髪質のお客様にヘアカラーを行う際に多いのですが、縮毛矯正の1剤で還元していて、少し油断をしたらテロンテロンに過還元してしまい激しく傷んでしまったり、最悪の場合はジリジリ、チリチリのビビり毛になったりします。
縮毛矯正1剤の強さを示すスペック
縮毛矯正の場合の還元の度合いは、パーマなどと比較すると随分と強い還元剤でしっかりと還元しなければいけません。
縮毛矯正剤やパーマの1剤(還元剤)の強さを示すスペックは
- チオグリコール酸などの還元剤の濃度
- アルカリ性〜酸性などのpH(ピーエッチ)
- アルカリの強さを示すアルカリ度(酸性の場合は酸度)
この3つの数値で表すのですが、初心者として理解しておくのは、還元剤濃度とアルカリ です。
※通常の薬剤の場合はpHとアルカリ度はある程度は連動してます。
たとえば、縮毛矯正剤やパーマ液のスペックを見ると…
↓
①チオ濃度7%、pH9、アルカリ度6ml や ②チオ濃度6%、pH8、アルカリ度3ml などと書かれていますが、これで②より①の薬剤が強いと分かります。
縮毛矯正の1剤のスペックとしては、基本はこの2つをしっかりと理解しておいてください。
↓
◎チオグリコール酸などの還元剤の濃度が濃いほどしっかり還元できる。
◎アルカリが強い(pHが高い)ほど還元剤が良く働くのでしっかり還元できる。
この薬剤と薬剤塗布してからの放置タイムで髪のS-S結合が還元されていくのです。
ヘアカラー毛や軟毛はアルカリ暴走に注意
たとえば同じスペックの還元剤で、毛染めをしてなくて太くて硬い髪質の方の場合、放置タイムが20〜25分間ぐらいでも問題なく行えますが、ケラチンの少ない細毛、軟毛、猫っ毛やヘアカラー(毛染め)をしている方などの場合は、18〜19分間ならバッチリだけど20分間以上放置すると凄く傷むことがあります。
これは還元剤の【アルカリ暴走】によるところがあります。
例えば、さほどアルカリが高くない1剤の還元と放置時間の関係はこんな感じです。
↓
アルカリの高い1剤の場合はこんな感じになります。
↓
この図は何を表しいてるのかというと、カラー毛や少し細毛、軟毛な髪質の方の場合…
あまりアルカリが高く(強く)ない1剤なら
↓
放置タイムが20分〜25分の間ぐらいが、良い塩梅の還元具合です。
これがアルカリの高い(強い)1剤の場合だと
↓
時間の経過と共に急激に還元が進行する傾向があるので、18分〜20分の間だけが良いという還元具合になってしまいます。
これがダメージ毛やハイトーンの毛染め、猫っ毛のお客様の場合、もっと還元時間の許容範囲は狭くなり、少しのオーバータイムでビビり毛などの失敗の原因になるのです。
この現象が縮毛矯正剤の『アルカリ暴走』と呼ばれるもので、ちょっとした油断で過還元の大失敗を招き、縮毛矯正恐怖症の理美容師さんを増やしてる原因です。
このようにハイリスク・ハイリターンとも呼べる縮毛矯正。それだけにお客様の深刻な悩みを解消することができた時の喜びは、ひとしおです。私たちは、使いやすさで理美容師さんの失敗を根絶し、お客様に笑顔になっていただける薬剤をご提供できるよう、これからも理想を追求し続けます。